「珠洲さん…ありがとう…」


泣いたあと、すっきりした顔で篤夫さんは私にお礼を言った。


「いえ、私は何もしてませんから。私はただ、春美さんがしたかったことを手伝っただけです」


「………そうか。僕、明日から仕事に行くよ」


「えっ、本当ですか?」


「うん。僕も、春美を愛している気持ちは今も変わらない。春美が心の中にいれば、頑張れる。…そんな気がするんだ」


「篤夫さん…」


「珠洲さん、春美によろしく言っといてくれ。僕はもう大丈夫だって」


「……はい、必ず伝えます!!」


私の言葉に、篤夫さんは笑みを浮かべた。




「春美さん…篤夫さん、もう大丈夫ですよ」


そう言って、後ろに佇む春美さんに笑いかける。春美さんは、会った時よりも薄くなっていた。


{えぇ、全て聞いていたわ}


「逝っちゃうんですね…」


春美さんは、コクリと頷く。


{貴女に会えて良かったわ。このまま貴女に会わなかったら、私はずっとこの世にさ迷っていたと思うの}


「…春美さん」


{珠洲ちゃん、ありがとう}


「春美さん!!」


春美さんは私の頭を撫でて、そして、光の粒になって天に登っていった。


「…………」


春美さんが撫でたところを押さえる。春美さん、さようなら。私も貴女に出会えて良かった…


キーンコーンカーンコーン…


「えっ!?もうこんな時間!?遅刻する〜!!」


学校のチャイムが鳴り、腕時計を見ると時刻は8:30だった。私は急いで学校に向かう。