そっか。

この人の一番大切な人こそが若菜だったんだ。

"その子に何かあったら…"

確かに、街1つ破壊しかねないほどの恐ろしさだった。

でも、なんで俺らが殺気を向けられなきゃならない?

若菜が俺たちを裏切ったのに。

俺たちが被害者なのに。

「よー…ちゃん」

「おはよう。若菜。」

目を覚ました若菜を見て、洋一郎さんは優しく微笑んだ。

「クラス優勝と最優秀賞。両方お前が取ったぞ。」

「やった〜…けど、動けないや。」

あははと笑って、若菜は俺たちを見た。

「りーちゃん。綾人。ありがとう。」

「べつに。」

「あ、晋ちゃん…もう帰ったかな?」

「呼んだ?若菜。」

日比谷がどこからともなく現れた。

「あはは。うん。本当に晋ちゃんは呼ぶとすぐ来てくれるよね。ありがとう。」

「おう。お前は本当に無茶しすぎな。まぁ止めはしないけど。止めても無駄だし。」

「うん。でもよかった。みんなで勝てた…から。」

「はいはい。よかったよかった。いいからもう寝ろよ。家までちゃんと連れてってやるから安心しろ。」

「ん…ありがと…」

そう言うと安心しきった顔で若菜は眠った。