若菜に名前を呼ばれるのなんて久しぶりだ。
若菜に触れる事なんてこの先もう、ないと思っていた。
何も言わずに引っ張った手をギュッと握り返してくれる君。
「あの〜圭くん?一体なんて書いてあったの?」
「いーから。今は走るよ。優勝したいんでしょ?」
「あ!じゃあ急がなきゃ!」
いきなりスピードアップする若菜。
やっぱり、足速いな。
チラッとクラスの方をみると綾人達はポカンとした顔をしてた。
そりゃそうだ。
だって俺が選んだのは若菜。
紙の内容がどうであれ、普通に選んではいけない人なのだから。
でも、気持ちに嘘はつけなかった。
俺は…君が好きだよ。若菜。
ゴール目前、審査員に紙を見せる。
その中には洋一郎さんもいた。
みんな、少し驚いた顔をした。
まぁ、俺たちのことを知ってるんだから当たり前だけど。
「本当にお前が選んだのは若菜なんだな?」
と洋一郎さんが俺に聞く。
「はい。」
真っ直ぐ、目を見て答えた。
「ゴールだ!1位おめでとう!」
洋一郎さんは複雑そうな笑みを浮かべてそういった。


