せっかく穴場につれてきてくれて、人がいないところで綺麗な花火を見られるのに。
「あー、でも蒼衣は花火じゃなくて、俺を見て?」
「そ、そんなこと.....っ!」
そんなこと言われたら、今でも壊れそうなくらい早く動いてる心臓が、よけいに早く動いてしまうから。
慣れない言葉や行動を並べられ、戸惑いが隠せない私。
これじゃあ本当に、狼先輩だよ......
結局、花火には全然集中できずに、打ち上げが終わってしまった。
残念なような。
だけど、残念じゃないような.......
先輩にちょっかいだされて、花火に集中できなくて。
でも、いやな感じはぜんぜんしなかった。
何でだろう.......
不思議だ.....
「あの、私はこれで。」
花火が終わり、夕方の待ち合わせ場所までやってきた私たち。
ここからはひとりで帰ろうと、そう声をかける。
「いや、なに言ってるの?俺が家まで送っていくよ?」
「そ、それは平気です!申し訳ないです!」
「こんな夜遅くに女の子ひとり帰らせるわけがないでしょ?」