「ははっ、嘘だよ。俺が見つめさせたんだし。」
そ、そんなこと言われても。
どっちが本当の気持ちなのか分からない。
「照れるって言うのは嘘だからさ、俺のこと見てよ。」
そう、色っぽく囁く。
あ、改めてそう言われても先輩のことを見られるわけがない。
それに、ここは下駄箱の目の前。
いつ誰が通るか分からない状態。
そんなスリルとも戦っていた。
「蒼衣......」
「っ.....」
不意に呼び捨てするなんて、そんなの反則.......
私はゆっくり先輩の目を見た。
真剣な顔で、私を見つめている先輩。
目があったまま、時間が止まってしまったかのよう。
何の音も聞こえない。
真祐先輩の顔しか見えない。
2人だけの世界に、入ってしまったかのようだ。

