「な、なんで......っ.....1人にしたんですか........」
「蒼衣が1人で走っていくから。」
「こ、こわかっ......たっ........」
先輩に抱きつきながら、ぽろぽろと涙が流れてくる。
1人で走り出した私が悪いのに。
それでも先輩は、「ごめんな。」と、優しく私を抱きしめてくれていた。
涙を流しながら、先輩の腕をつかみながら。
なんとか出口に向かって歩く。
先輩がいつどこでお化けが出てくるか、教えてくれて、最後の方はもう、お化け屋敷の意味はなかった。
「やっと、蒼衣の顔見られた。」
お化け屋敷から出て、明るくなった視界。
私の頬を撫でながら、愛おしそうに先輩はそう言った。
「泣かせてごめんな。」
先輩が切なそうに、そんなことを言うから。
私は必死に首を横に振った。