事件が起きたのは、高校に入学して間もない、6月初めのことだった。




気温がどんどん上がっていき、もう春も後半にさしかかっていた。




「蒼衣~!次、移動教室ー!」


「あ、はーい!!」



教室の扉の前で、そんな声が聞こえてくる。



私の名前は如月蒼衣(きさらぎ あおい)。



高校一年生。


説明するのが難しいほど、ごくごく普通の女子高生。



これといって、特徴がない。



そして、私を教室の扉に寄りかかりながら待っているのは私の親友。



萩原(はぎわら)めぐみ。



中学2年、3年、と同じクラスで仲良くなった。



今となっては大親友。


めぐみは、スラッとしたシルエットに


長くてサラサラとしたストレートロングの髪の毛。



そんなめぐみは、中学の頃から男の子にモテモテで。



私はそんなめぐみをずっと横で見てきた。



男の子にモテるのは事実だけど、それを自慢してきたりしない。