「織ちゃん」




でも今からする。



ほとんど確信して、にゃん、と猫を鳴きまねた。


クスクス笑った安城の顔がゆっくり近付いてきて、優しく唇を重ね合わせた。


すぐに安城は離れていって、閉じていた目を開ければ彼は泣いていた。


安城は一滴だけぽろりと雫を落としたけれど、今まで通り何もなかったかのように笑ってまたあたしにキスをする。


安城は傷ついている。


だからあたしはこの人を目一杯甘やかす。


安城はあたしを好きにならない。


だけどキスもセックスもする。


何か悪いことがあるだろうか。ううんきっとない。あたしたちはこれでいいのだ。




「……ごめん織ちゃん」


「うん」


「……ちょっと酔っちゃったみたいだ」




にこりと笑った安城に押し倒されながら、あたしもにこりと微笑んだ。




「うん、あたしも」




-ただ酔う、甘いヒトタチ fin.-