次の授業は数学だったっけ。
教科書とノートを準備していると、
「ま、松下さん、これ、古典のノート、先生から…」
と、一人のクラスメートがおずおずと、いや、ビクビクしながら差し出した。
「ありがとう」
そう言っただけなのに、ビクッとして慌てて自分の席に戻るその子。
そ、そんなに怖がらなくたって…
さすがに少し傷つく。
元はと言えば、私が笑わないのがいけないんだろうけど…。
ほんとは、『鉄仮面』なんて呼ばれてもちっとも嬉しくないし、ちゃんと笑いたい。
だけど、あのことがあってから、私は今でも笑えない。
ため息をつきながら、眠たい授業と自分自身から目を背けるように、窓から見える青い空を見つめていた。