そして、その「誰か」にどうして私が選ばれたのかも。

本当はちゃんと、わかってる。



「ありがとな、智咲」

「……」

「ごめんごめんもう寝るから。おやすみちさちゃん」


ぐしゃぐしゃと私の頭をかき撫でた手が離れ、また彼はごそごそと布団の中で動き始める。
体の向きを変えたのだろう。互いに背を向け合って、今度こそ、おやすみの時間だ。


静かになったベッドの上で、私はそっと目を閉じた。
このままゆっくりと眠りについて、朝が来たら、彼女の元へと帰る彼を見送ることになるのだろう。

いつかまたこんな夜が来て、彼がこの布団にもぐり込んできたとしても。
何かが変わったりはしない。

私たちはうとうとしながらほんの少し言葉を交わして、彼の心が落ち着いたら、背を向け合って眠るだけ。


ああ、朝が来なければいい。
私にずっと朝が来ないように。彼にも朝が来なければいい。

ただふたりでこのまま横に並んで、眠っていられたらいいのだ。本当は。



(……ねえ、私ね、)

あなたときょうだいになんてならなければ良かった。
それか、もっと早く、こんな気持ちをまだ知らなかった頃にきょうだいになれていたら良かったと、

ずっと、ずっと、思ってるよ。









背中越しに寝息をたてるあなたはきっと知らないこと。

布団の中に隠した気持ちも、枕を濡らすこの涙も、あなたは一生、知らなくていい。











-END-