「…ここで会うなんて偶然だね」


無表情のままそう言うと、和樹はへらっと笑いながら坂の下のほうを指差した。


「ここ下って、左に曲がって、商店街抜けたら俺の家だから」


「えっ、私の家すぐそこなんだけど」


そう言って私が目先の家を指差すと

私と和樹は顔を見合わせて笑った。


「こんな家近くてよく気付かなかったよね」

「本当。中学生の時、実はすれ違ってたのかもね」

「確かに」


ふと俯くと、自分の格好の適当さを改めて認識して、すこし恥ずかしくなる。