''バチン!!''大衆の行き交う歩道で、それは鳴り響いた。人々は、当然、音の響いた方に目を向ける。そして、原因となったモノを確かめると様々な感情の混ざった視線を投げてくる。一つだけ言えることはその原因には関わらず立ち去っていく。
 そう健太郎は、頬をさすりながら思う。慣れたものであった。叩かれることも人々の不快な視線もー。
 「アンタなんか、本当最低っ!!死ね!!」
 そう泣きながら、女性が走り去って行った。大学生らしい若い女性であった。
 「お~……痛ぇ…」
 そう呟き、赤くなった頬をもう一度さすった。今までにも同じことは、何度かあった。皆、健太郎に告白して来た女性である。その女性たちの告白を断った健太郎に対し彼女たちのリアクションにはほぼ3パターンみられた。
 その場に泣き崩れる娘(こ)。
 無言で走り去る娘(こ)もちろん泣く。
 先程の女性のように思いっきりビンタをし罵声を浴びせ立ち去る娘(こ)。
 健太郎は、去って行く彼女たちの記憶を辿りながら今後幾度、こういう出来事をしなければいけないのか溜め息混じりに思った。