「ったく…」と呟いて。
靴を履き替えるために下駄箱を開けて、
「──あれ?」
声を漏らした。
上履きの上にのっていた紙に首をかしげて、折られたそれを開いて。
高まっていた気持ちが、萎んで落ち着いて、冷静になる。
驚いて目を見開いた。
“屋上で、まってるから。”
その下に綴られた名前を見て、彼女が脳裏に浮かぶ。
一瞬迷ったけど、茜たちに追いつかれる前に、私は“そこ”へ向かって歩き始めていた。
ぐるぐる、考えながら、静かな廊下を1人で歩く。
──あの時以来、一度も関わってこなかったのに。
ひっぱたいて、以来、一度も。
たまに、目が合うこともあったけど、“彼女”の噂も時折耳にしていたけど。
彼女があのあとどうなったのか、どうしたのか、私はあまりはっきりとは知らなかった。
…青嵐が解散したあと。
噂では、私も数回会ったことのある“あの族”に、嘘をついて取り入って守ってもらっている、と聞いたけど。
所詮、噂。
それに、“あの族”の彼らは彼女の本性を知っているし、知っていようが知っていまいが、彼らはめんどくさいと言って切り捨てそうだ。
でも、それだけじゃなくて、私が叩いたあと彼女が流した涙は“くだらない涙”なんかじゃなかったと、私は思いたい、思ってる。
だからあの時、変わってほしいとおもったんだ。
あんたは、変われるよっておもったんだよ。
たどり着いた扉に手をかけて押すと、相変わらずギィ…と鈍い音がした。
久しぶりだ、この場所も。


