すぅっと息を吸って反論しようとしたけど。
少し前を歩いていた伽耶と南と茜が、振り返りながら、きっと無意識なんだろうけど、綺麗に笑うから。
なんだか反論するのもどうでもよくなって、吸った息を吐き出して私も笑顔をこぼした。
駆け出して三人に追いついて。
「──っよし、誰が一番先に空き教室につけるか競争しよ!よーいどんっ!!」
「え、やだ」
「小学生かよ」
「恥ずかしいヤツ」
…はげしく恥をかかされた。
ちょ、みんなひどいんだけど。近くで聞いてた人クスクス笑ってるんですけど。
やめて、聞かないで!!
それにしても、卒業式なんだからこれくらい雰囲気にのまれてやってくれたっていいじゃないか!今日も皆さん元気に平常運行ですねぇえ!!
「っく…!!い、いいもんね、一人で先についちゃうから!一番乗りしちゃうからぁぁあ!!」
なんて、恥ずかしさからその場を逃げ出すようにそう言って走り出すと。
「「いってらっしゃーい」」
なんて南と伽耶の声と、茜の馬鹿にしたような笑い声が聞こえて。
いいもんね、なんて心の中で叫びながら私は一足先に校舎に入った。
下駄箱で、やっと走る足を止めて。


