「いやいや茜が!」
「お前が先いけっつの」
なんてやり取りを何回か交わして、2人して口をつぐんだ。
こんなどうでも良いやり取りでさえ、じわり、胸が心地よく締め付けられるんだから、やっぱり私はどうかしている。
ただ、でも、そんな気持ちを抱いてしまったら別れがたくなってしまって。突然寂しくなってきて。
「……部屋、よってく?」
なんて。
なんだか、いつもより憂いを帯びた声が出てしまった。
そうすれば茜が、照れたように慌てたようにバッと顔を上げて「は、」なんていつもよりちょっと大きい声を出す。
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