「でね、こないだ……」

莉子の話しは全然頭に入ってこなかった。

そうだよね、イケメンだしヤンチャで優しい……モテるよね、だよね。

ライバルーー?

胸の奥で、何かがグルグルと回っている。なんなんだ、この気持ちは。

莉子は、サバサバとした男前な性格だ。でも香子は莉子と違ってどちらかと言えば派手な積極的な性格で、地味な私とは正反対。

もちろん同じ中学だし、知らない仲ではないが、どちらかと言えば苦手なタイプだった。

そんな香子が……?

「……そうだ、ソウ!」

「えっ?」

名前を呼ばれただけなのに、心臓が跳ね上がる。

「この問題、分かる?」

「ああ……いや、分からないな、ごめん」

もう、安斉くんの話は終わっていたようだ。

ダメだ、心臓がもたないよ。恋するってこんなに大変なことなの?

ああ、テスト前なのに…。