「安斉くんはおいといてさ……」

え、おいとかれちゃうんだ。
まあ、そうだよね。私が変に話しを膨らませるのも可笑しな話だし。

「ソウは相変わらず好きな人とかいないわけ?」

不意に莉子が私の顔を覗き込む。

「え?……ん、まあね」
「恋はいいもんだよ」

からかうように言わないでよ実梨。

「そうそう、片想いでも両想いでもね」
「うん」

そうだよね、それは分かってる。
みんなそれぞれ、恋を楽しんでいるんだ。そんな、全てが楽しい年頃。

青春ってやつ?そんな時期に好きな人の1人もいないとなんだか損しているみたい。
そうは思うけど。

「ま、でもね、無理矢理するものじゃないけどね」

莉子が言う、ごもっともだ。

「あはは、そりゃそうだ」

私だって、今まで気になる男子くらいはいた。ただ、一歩が踏み出せなかっただけだ。

無理矢理じゃなく、自然と前に進みたい……なんて難しいのかな。

安斉くんの太陽のような笑顔がうかぶーー。

「あ、時間だよ、行こう」

実梨が急いで片付けを始め、みんなもそれに付いて行く。