アオゾラをカナデヨ

「そっか。ごめんな、待たせて。オレがもっと早く香子にちゃんと言ったらよかったんだな」

私は安斉くんの胸の中で、首を横に振る。

「私は、みんなに優しい安斉くんが好きだよ」

安斉くんの胸から顔を上げると、そこには大好きな柔らかい笑顔。

「うん、ありがとう」

私の背中から離されたたくましい腕は、自然と私の手に繋がれる。

やっぱりこの大きな手が、好きだ。
この暖かい手に包まれていると、不思議な安心感を感じる。

「私もさ、中学の時の安斉くん覚えてるよ」
「えっ?」

思ってもみなかった私の言葉に驚く安斉くん。

「本番終わってから、会場で安斉くんの学校の演技見てて」

「あ、そうか、見てたのか」

「うん。あのソロ、本当にかっこよかった……キレイな音で」

あの時の清々しい笑顔と、澄み渡るトランペットの音色は忘れないだろう。

「よく覚えてるな」

照れて目をそらす仕草は、まるで小学生のようだ。

「前に莉子とその話しになった時……知らないフリしてごめん。なんか、恥ずかしくて言えなかった」

「ああ、あいつ大袈裟に騒いでたよな!まあ、オレもソウと会ったこと言わなかったから一緒だよ」