「全国大会の日、休み取らないとな」

「ちょっとお父さん、まだ決まってないから」

そう、運命の発表はまだだ。

「いや、いくだろ」

なぜかドヤ顔の一平。

みんな、ありがとう。

帰る両親と一平を見送り会場へと戻るため、麻美と並んで歩いていると、香子が莉子と話していた。

宣言通り、今日は安斉くんとはなしはしていないようだ。

「ソウ、お疲れ様。昨日はありがとうね」

私に気づいた香子が、話しかけてくる。

「うん、いろいろありがとうね」

事情を知っているらしい莉子は、笑顔で私たちを見ている。

「演奏、感動したよ。泣いちゃったよ」

そう言って握っているハンカチを見せる。

「え?ほんと?すごい嬉しい」

誰かを泣くほど感動させる演奏ができたのなら、もう言うことはない。

「うん、みんなが頑張ってきたの見てたから余計に感極まっちゃって」

「そっか、ありがとうね」

演奏したメンバーだけじゃない、控えの部員たち、こうして応援してくれる周りの人、沢山の人に支えられてここまで来ることがができたんだ。

「もう行かないと」

「あ、うん。じゃあ連絡待ってるよ」
「うん」

香子と別れ、3人で会場へ入る。