「いや、おまえは今日は休めよ」

「え?大丈夫だよ、ちゃんと行くよ」

もう、何からも逃げない。そう決めたんだ。香子からも、安斉くんからも。

まだ暖かい手は私を癒してくれている。魔法のように、私を元気にしてくれる。

「無理してないか?」
「うん、逆に気が紛れるし」

交わされる視線、自然と笑顔になる私を見て安心してくれたようだ。

「じゃ、行くか。もう合奏始まるころだ」

「うん。来てくれてありがとうね」

私より随分高い、安斉くんの顔を見つめると、そこにはいつもの照れた顔。

「いいって」

そう言いながら私の頭をポンとなでる。キュンとする胸。反則だよ、その笑顔は。

安斉くんが、誰を好きだっていい。

今こうして、私を助けてくれた。

そんな優しい笑顔を見せてくれた。

もう、それだけで十分だ。

本当の恋は、きっともっと私を強くしてくれる。