「本当に、大丈夫。今、私が安斉くんに甘えるのは違うと思うから……ごめんね」

私の精一杯の答えに安斉くんは、たまらず私の手を握る。

「……なんだよ、それ」

言い放った言葉は湿った教室に響き、私の心に優しく届く。

「ありがとう」

そう言って安斉くんの大きな手を握り返しただけで、曇っていた心に晴れ間が見えるようだった。

「そんなに香子に気を使わなくてもいいんじゃないか?」

そうだよね、その通りだと思う。

でも、やっぱり……。

「香子も、大事な友達だから」

その私の一言で、安斉くんはやっと少し納得がいった様子だった。

「オレこそ、香子にハッキリ言ったつもりだったけど、ちゃんと伝わってなかったみたいで、ごめん」

視線を床に落とす安斉くん。

「大丈夫だって。香子、振られたって言ってたよ」

「……だよな。強いな、あいつ」

「そうだね、羨ましいくらい。さ、部活行かなきゃ」

繋いだままの手を伸ばして立ち上がり、安斉くんも立たせる。