うーん、困った…

え、何が困ったって?


聞いてくれるかい?

僕の彼女のことなんだ。


実は彼女、大のマンガ好きなんだ。

いや、別にそれが悪いと言ってるわけじゃないんだよ。

僕だっていい年して、まだ週間少年誌とかコンビニで立ち読みしちゃうし。


そんくらいなら君も経験あるだろ?


じゃあ、僕の彼女の何が問題かって?


彼女は「読むこと」じゃなくて「集めること」に熱意を注ぐんだ。

一度気に入ったマンガ家さんがいれば、徹底的に集める。


それこそ絶版になっているデビュー作から、最新の画集までとことんなんだ。


休みの日のデートといえば、本屋さん巡り。

大きな本屋にたまに連れて行けば、声をかけない限り、一時間でも二時間でも居座る雰囲気だ。


そして、少しでも安く集めようと、古本屋さんをとても好む。

何軒もはしごして、一番安く手に入れようとする。

僕は近辺の古本屋さんをくまなく回る。


あぁ、その本への情熱を僕の愛車のガソリンにも注いで欲しいくらいだ。

実は僕って、いわゆるアッシー君?



そもそも何で付き合いだしたんだっけ…


そう思いながらも今日も彼女の家に車を走らせる。

玄関のドアを開けた彼女は部屋着だった。

中に入るように手招きする。


あれ、前より少し部屋がスッキリしてる。


彼女が自慢げにDVDと、あるマンガを僕に差し出した。


あ、これ、付き合いだす前に二人でいいねぇって言ってたDVDだ。


そっか、これをきっかけに付き合いだしたんだっけ。


古い作品だったから、やっと古本屋でこのDVDの原作マンガを見つけたの。と彼女が笑った。


安っぽいラブストーリー。

そんな安っぽさに負けない、僕らの安っぽいラブストーリー。