目の前の男には表情がなかった。モザイクがかっているのだ。手招きをしていた。背丈は私と同じぐらいで、男のが若干高い。スーツはチャコールで、どことなく雰囲気にマッチし違和感はなかった。
 私は開け放たれた扉の中に入った。
 館内部は赤い内装をしていた。扉を入って奥にはフロントがあるが誰もいなかった。ソファーが大量にあり、壁には誰が描いたかわからない絵画が飾られていた。決して品の良い場とはいえなかった。
「ここはどういった場所なんです」
 前を歩く男は止まった。そして振り向いた。