夏休みが始まって三週間が過ぎた頃。
補習を受けさせられている彼女は、プールの中で相変わらず溺れているようにもがいていた。
まるで罰ゲームみたいだ。
いい加減気の毒に思いながら、彼女が泳ぐ隣のコースを泳ぐ。
俺たち水泳部のメンバーは、みんな県大会の選抜試験を控えて練習に必死になっていた。
高校に入って初めての大きな試合。
自由形で選抜試験を受ける予定の俺のタイムは順調にあがっていて調子がよかった。
「この調子なら、翠都は県大会出れそうだよな」
部活が終わり、着替えて更衣室を出ると、高崎が後ろから後を追いかけてきた。
「どうだろうな。試験受けるまでまだわからないけど」
「でもタイム順調にあがってるだろ。俺、最近全然ダメだし」
熱心に練習してるのに調子が悪いらしい高崎が、苦笑いを浮かべながらぼやく。
「まだあと少し日数あるから、わかんないだろ」
励ますつもりで高崎の肩を叩く。
そのとき、制服姿の女子がプールの入り口の前をうろうろと歩き回っていることに気がついた。