あ、また来てる。

夏休みが始まって二週間が過ぎた頃。

水泳部のメンバーばかりのプールに、どう見てもいつ見ても溺れてるようにしか思えない。そんな女子がひとり混ざっていることに気がついた。

夏休みが始まってすぐは、体育の水泳の授業で実技試験に合格できなかった生徒達が補習授業を受けに来ていた。

でもそれも一週間ほどで終わったはずだ。


「イチ先、あれ誰?」

水泳部の顧問の市川先生にタイムを計ってもらっていた俺は、自分のタイムを確認するとプールサイドのイチ先を見上げた。


「あー、浅井先生が担当してるクラスの生徒らしい。ひとり、補習が終わってないとか言ってたな」

「ふぅん」

コースの真ん中で、溺れているようにもがいている女子。

俺はそんな彼女を少し憐れんだ目で見つめた。

あれじゃぁ、どれだけ補習したって意味ないと思う。

早くやめさせてやればいいのに。


高一の夏。

俺が早瀬の存在を知ったのは、学校のプールの中だった。