プールの入り口に向かうと、制服姿の女子がプールの金網に凭れてポツンと立っていた。
心細さそうにときどき爪先で足元の土を蹴る彼女をしばらく見つめてから、静かに彼女に歩み寄った。
俯く彼女は、近づく俺に気づかない。
伏せられた長い睫毛。
ちょこっと突き出た唇。
どちらかというと童顔で少し幼い印象を与える彼女は、高崎が言うみたいによく見なくたって、結構可愛い。
普通に可愛い。
「早瀬」
声をかけると、彼女が弾かれたように顔をあげる。
俺の顔を見て嬉しそうに笑う彼女に、胸の奥がざわついた。
不意打ちで見せる、そんな彼女の表情がすごく可愛いと思う。
そのことを、俺はずっと知ってた。