「悪かったな。高崎も練習頑張ってたのに、俺が急に選抜試験受けるから」
「そんなこと気にすんなって。俺、元々他の種目のほうが得意だったし」
高崎が俺の肩を叩いてからりと笑う。
今日の練習中、県大会に出場するメンバーを決める選抜試験があった。
それで俺と高崎は同じ種目の選抜試験を受けた。
元々俺は、半年前にバイクと接触したときの怪我を引きずってて試験を受ける予定がなかった。
だから、俺が試験を受けないことで空いてしまう枠を高崎が埋めようと練習を頑張っていて。
実際調子をあげてきていた。
だけど直前で俺が選抜試験を受けたから、もしかしたら高崎が出る可能性が高かった種目枠を結果的に俺が奪うことになってしまったのだ。
「自由形は、翠都が出たほうがいいってみんな思ってたし。俺も別種目のほうで選んでもらえたから、そっちで頑張るよ」
高崎がそう言って明るく笑う。
その笑い声を聞いて、俺は少しほっとした。