「お疲れさま!」

着替えを終えた部活のメンバー達が、次々に更衣室をあとにしていく。

彼ら同様に既に着替え終えていた俺は、ロッカー前のベンチに腰掛けると、スポーツドリンクのペットボトルを鞄から取り出した。

少しでも時間を稼ぐためにペットボトルの蓋を勿体ぶるように開けると、ゆっくりとそれを喉の奥に流し込む。

そうしながら更衣室から人がいなくなるのを待っていると、俺の隣に誰かが無遠慮な腰をおろした。


「翠都、お疲れ。お前、帰んないの?」

ペットボトルに口をつけたまま、ちらりと横を見る。

俺の横で濡れた髪をわしゃわしゃとタオルで乾かしているのは高崎だった。

同じ学年で、明るく人あたりのいいこいつと、俺はたぶん部活内で一番仲がいい。


「帰るよ」

答えると、高崎が髪を拭く手を止めて笑った。

「それにしても、翠都。やっぱり速かったよな」

高崎の言葉に、俺はペットボトルから口を離してその蓋を閉じた。