「試験のとき、久しぶりに全力で泳いだから最後のほう、すげぇきつくて。だけどそのとき、早瀬のことを考えた。俺が顔をあげたとき、早瀬はどんな顔してくれるかなって……」
「佐野くん」
「顔をあげたら早瀬が笑ってて、すげぇ嬉しかった」
佐野くんの言葉とあたしを見つめる優しい眼差しに、胸がきゅんと締め付けられる。
愛しい目で佐野くんを見つめ返すと、彼が俯いてほんの少し顔を赤くした。
「俺、早瀬にちゃんと言ってなかったんだけど……」
「うん……?」
俯いた佐野くんからの言葉の続きを待っていると、プールの方から盛大な水しぶきが飛んできた。
「わっ!?」
「えっ!?」
頭の上から雨のように降る水しぶきを受けて、あたしと佐野くんがほぼ同時に悲鳴を上げる。
「翠都ー。イチャついてる暇があったら早く練習しろよー」
からかうような笑い声が聞こえて、佐野くんと一緒にプールの方を振り返る。
プールの中では、水泳部の部員達があたし達の方に水を飛ばしながらケラケラと笑っていた。



