夏休みの補習が始まって二週間が過ぎたとき、プールの補習の生徒はあたし一人だけになっていた。

プールにいるあたし以外の生徒は、みんな水泳部員。

綺麗なフォームで、きちんと長距離を泳げる人達ばっかりだ。

聞くところによると、うちの高校の水泳部は県内でもわりと強い方らしい。

なんでも、県大会に出場したことのある選手もいるんだとか。

そんな部員達に紛れて、泳げないくせにプールの一コースを占領しているあたしは、彼らにとても申し訳ない気持ちになる。

最後まで残っているあたしは、さっきからたまに水泳部の人達に好奇の目で見られてる。

今すぐ、水泳部の人達にコースを譲って帰りたい……

肩身が狭い上に、一人ぽっちで恥ずかしい思いをしていると市川先生がやってきてあたしに声を掛けた。


「早瀬。今日こそきっと泳げるから、頑張れよ」

市川先生はそうやって、泳げないあたしに毎日気休めを言う。