「選抜試験頑張れ、って意味?」
頬を染めながら無理やりこじつけたキスの理由を伝えると、佐野くんがからかうように笑った。
県大会の選抜試験の大事な話をしていたはずなのに。
結局あたしがからかわれてる。
「もう、帰ろう」
笑っている佐野くんを放って立ち上がろうとすると、彼があたしの手首をつかんで引き止めた。
「ちょっと、佐野――…」
振り向いたあたしの唇に、佐野くんの唇がぶつかるように触れる。
それは不意打ちのキスで。
軽くだけれど確かに触れたことを自覚すると、じわじわと頬が熱くなった。
「今のは、早瀬もテスト頑張れって意味」
至近距離で、佐野くんがにこりと笑う。
夕暮れの空の下でも、その笑顔はやっぱり眩しくて。
あたしの胸を、キュンと強く刺激した。