「それとこれとはまた話が別だろ」
佐野くんはそう言ったけど、あたしは諦めなかった。
色んな言葉で佐野くんを説得する。
「佐野くん。あたし、佐野くんが県大会で泳ぐところが見たい」
やってみよう。
というより、やってみてほしい。
何度目かになるその言葉を口にしたとき、佐野くんがため息をついて、諦めたように頷いた。
「わかった。早瀬がそこまで言うなら選抜試験受けるよ」
「ほんとに?」
あたしが明るい声をあげると、佐野くんが苦笑いする。
「その代わり、早瀬は絶対に25メートル泳ぎきれよ」
「わかった。約束する」
あたしは力強く頷くと、佐野くんの頬にそっとキスをした。
一瞬きょとんとした表情を浮かべた佐野くんが、すぐに手の平で頬を撫でながら意地悪く笑う。
「今の、何?」
「キス、かな……?」
「どういう意味での?」
つい勢いでしたキスのことを、具体的に突っ込まれて恥ずかしくなる。
意味なんて、どうだっていいじゃない。
したくなったんだもん。



