彼の綺麗なフォームにしばらく見とれていると、プールを何往復かした彼が水の中から顔を出した。
手の平で顔についた水を拭うと、彼が被っていた水泳キャップを外す。
そこから覗く彼の髪は、夏の太陽みたいに鮮やかなオレンジ色だった。
頭を軽く振った彼のオレンジ色の髪の先から水の粒がキラキラと飛ぶ。
それが眩しいほどに綺麗で、あたしは惚けたように彼を見つめた。
食い入るように見つめていると、それに気づいたのか彼があたし達の方を振り返る。
だけどそれはほんの一瞬で、彼はまたプールの中へと戻ってしまった。
「今、一瞬こっち見たよね?かっこよくなかった?」
「え……あぁ、うん」
興奮して肩を叩いてくる千亜希に流されるように相槌を打つ。
水面が太陽の光で反射して眩しかったけど、一瞬振り返った彼は少しだけ微笑んでいたような気がする。
佐野 翠都――…か。
その名前と共にあたしの胸に焼きついたのは、透明な青い波間を漂う彼の姿と、夏の太陽みたいに鮮やかなオレンジ色だった。