そのときふと、あたしの頭にある考えが浮かんだ。
「佐野くん!」
あたしは佐野くんの腕を振りほどくと、勢いよく彼を振り返った。
突然腕を振り払われた彼が、驚いた顔をしてあたしを見下ろす。
「早瀬?」
「佐野くん!あたし、やっぱりもう一回25メートルのテスト受ける」
「は?突然どうしたんだよ。イチ先はもういいって言ったんだろ?」
「でも、もう一回受けるの!」
あたしは怪訝な顔の佐野くんの腕をぎゅっと掴んだ。
「あたしはもう一回テストを受けて、今度こそ25メートルをちゃんと泳ぎきる。だから、佐野くんも県大会の選抜試験受けてみない?」
佐野くんが一瞬大きく目を瞠る。
けれどすぐに、ゆるゆると首を振って苦笑いした。
「でも早瀬……俺は……」
笑って誤魔化そうとする佐野くんを真剣な目で見つめる。
「やってみようよ。全然泳げなかったあたしが、もうすぐ25メートル泳げるくらいにまで成長したんだよ?佐野くんなら、きっとできるよ」
真剣な目をしたあたしを、佐野くんが困ったように見つめ返した。



