「でも、結局25メートル泳ぎきれなかったんだよね。せっかく佐野くんに教えてもらったのに」
苦笑いを浮かべながらそう言うと、佐野くんもつられるように笑った。
「だけど、補習は一応終わりなんだろ?」
「うん。25メートルは泳げなかったけど、頑張ってたから今回は特別にって合格だってイチ先が……」
「それならもっと喜べよ。これで残りの夏休みを満喫できるんだし」
「うん……」
佐野くんを見上げて、あまり乗り気でない相槌を打つ。
補習が終わって嬉しい。
だけどあたしの心にはほんの少しわだかまりがあって、それを素直に喜べなかった。
自分の練習時間を割いてあたしに泳ぎ方を教えてくれた佐野くん。
それなのに、結局中途半端な結果しか残せなかったことが申し訳ない。
「早瀬、あんまり嬉しくなさそう」
俯いていると、佐野くんが横から顔を覗き込んできた。
「嬉しいよ」
「じゃぁ、何でそんな沈んだ顔してんの?あ、補習終わったら俺に会えなくなるから淋しい?」
「そ、そんなんじゃないよ!」
「そんなんじゃないんだ?」
佐野くんが面白くなさそうにあたしの言葉を復唱する。
わざと不貞腐れたみたいに顔を顰める佐野くん。
その反応を愛おしく思いながら、彼の横顔見つめる。



