いやだ、いやだ。
怖い。
パニックに陥りかけていたとき、不意にあたしの身体が何かにすっと引き寄せられた。
それは身体が全部、水に飲み込まれてしまうような感覚で。
怖くて怖くて仕方なかった。
「助けて!怖い、怖い……」
声にならない声で、必死に叫ぶ。
身体を丸めて震えていると、両肩が何かにぎゅっと包み込まれた。
濡れたスウェットの上から感じる温もり。
「怖い、怖い……」
出せていないと思った声が、気づけば出せている。
「早瀬、落ち着いて」
温かい吐息と共に、耳元で囁かれる声。
「もう、大丈夫だから」
声に導かれるようにそっと目を開けると、佐野くんがプールの中であたしの身体を抱きしめてくれていた。
「佐野くん……」
名前を呼ぶと、佐野くんがあたしの頬を撫で、濡れて張り付いた髪をそっと掻きあげてくれた。
「危ないな、気をつけろよ」
怒ったようにそう言って、佐野くんがあたしの身体を抱き上げてプールサイドに座らせる。



