「もういいよ。あたし、着替えて帰るから!」
いつまで笑い止まない佐野くんに、だんだん腹が立ってくる。
少しイラついていたあたしは、勢いよく立ち上がった。
怒りに任せてそうしたせいで足元が不注意になり、ダボダボのスウェットの裾を踵で踏んづける。
それだけなら後ろに尻もちをつくだけで済んだかもしれない。
でもプールサイドは水で濡れていて。
そのせいで、裾を踏んづけた拍子に足がつるっと前に滑った。
「あっ……」
ぞわり、と瞬間的に鳥肌がたち、背筋が凍る。
「早瀬!?」
佐野くんの笑い声が、一瞬にして焦ったような声に変わる。
視界の端に佐野くんの姿を捉えながら、体制を立て直そうとバタバタと腕を動かす。
けれど結局、無駄にジタバタしただけで、あたしの身体はそのまま倒れるようにプールに落ちた。
落ちていくあたしの頭の中で、昼間溺れたときの記憶が甦る。
身体が水の中に沈んで、昼間と同じような息苦しさを感じた。
昼間の恐怖を思い出して、なんとか水面に上がろうと必死でもがく。



