「大丈夫か?お前、テスト中に溺れたんだ」
「はい。途中で足攣って……そこまでは覚えてるんですけど」
あたしは何だかばつが悪くて、苦笑いする。
「あの……テストはやり直しですか?」
おずおずと尋ねると、市川先生が笑った。
「いや。早瀬は十分頑張ったから、今回はこれで合格ってことにしてやるよ」
溺れた上に、もし再テストなんてあったらツイてなさすぎる。
「よかった」
でも市川先生にそう言いながらも、本当にそれでいいのかなという気持ちもどこかにあった。
「じゃぁ、俺は帰るから。お前も気をつけて帰れよ」
「はーい」
あたしがほっと息をつくと、立ち去ろうとした市川先生が思い出したように振り返った。
「あ、早瀬。佐野がお前のこと助けてくれたんだ。あとで礼言っとけよ」