「そんなこと言われても、あたしも残りの夏休みを楽しみたいし」
「そうだよね……」
あたしはしばらく千亜希をじっと見つめたあと、力なく肩を落としてうなだれた。
落ち込むあたしを千亜希がどこか憐れんだ目で見つめてくる。
「碧もさ、さっさと合格しちゃえばいいんだよ」
さっさと……!?
千亜希はあたしを励ましているつもりだろうけど、それはどう考えたって無理だ。
だって、未だに10mすらまともに泳げない。
千亜希だって、心の中では無理だって思ってるはずだ。
千亜希の励ましを聞いたあたしは、ますます落ち込んでしまう。
うなだれていると、不意に空気が揺れ、千亜希の関心があたしから逸れる気配がした。
こっちは真剣に落ち込んでるのに。
むっとして顔をあげると、プールへと視線を向けた千亜希がぼそりとつぶやいた。
「でも、あたしも補習がなくなってちょっと残念に思うことはあるんだよ」
「残念?」