「そういえば、テストに受かったら何かお礼してくれるんだよな?」
「うん、そうだね」
そういえば、少し前に佐野くんとそんな約束をしたっけ。
頷くと、彼がいたずらっぽく目を細めた。
「そのお礼、キスにしてよ」
「え?」
今、何て?
「佐野くん、今……!!」
キスがどうとか聞こえたような気がするんですけど……
泳ぎを教えてもらったことには感謝してるけど、キスは無理だ。
だってあたし、ファーストキスまだだし。
慌てて訂正してもらおうとしたけど、コースを仕切りロープから離れた佐野くんはもう水の中を泳ぎ始めていた。
隣のコースをゆったりと気持ち良さそうに泳ぐ佐野くんを見つめる。
息継ぎをするために時折水面から覗く横顔が凛々しく綺麗で。
彼を見つめるあたしの胸は、ドキドキと高鳴った。
『そのお礼、キスにしてよ』
佐野くんの声が、プールの水面をざわつかせる波音と共にあたしの耳にリフレインする。



