透明な青、揺れるオレンジ





制服に着替えてプールを出たあたしは、入り口の金網の傍できょろきょろ辺りを見回す。


佐野くんはまだ来ていないみたいだ。

そのままプールの入り口で待っていると、練習を終えた水泳部の部員二人が話しながらあたしの前を通り過ぎる。


「翠都、ほんとに県大会の選抜試験受けないつもりかな」

「もったいないよな。もうほとんど調子戻ってるんだろ」

彼らは佐野くんの話をしているみたいだった。


県大会……

そういえば、市川先生も佐野くんが去年の県大会に出たとか言っていた気がする。

「あの……」

気になって声をかけると、もうあたしの前を通り過ぎていた部員の二人が少し驚いたように振り返った。


「あの……佐野くん、何かあったんですか?」

「あぁ、あんた補習で来てる子か」

「佐野くんて、去年は県大会に出たんですよね?今年は選抜試験受けないって……何かあったんですか?」

あたしが尋ねると、部員の二人は困ったようにお互い顔を見合わせた。


「俺らが言ってもいいのかな?」

「さぁ?でも別に翠都本人が隠してることでもないしな……」

彼らは二人で少し相談したあと、あたしに話をしてくれた。