透明な青、揺れるオレンジ



「早瀬。そこまで顔はあげないでいいよ」

水面から出た耳に佐野くんの声が鮮明に届く。

それと同時に、佐野くんの手があたしの頬に触れた。

佐野くんはあたしの顔の傾きを修正すると、思わずビクリと肩を震わしたあたしの後ろからすっと離れた。

「今教えた腕の動きをつけて向こうまで泳いでみて」

「う、うん」

佐野くんが離れても胸のドキドキは治まらなくて、あたしは伏し目がちに頷いた。

佐野くんに触れられた余韻で緊張しながらも、できるだけ教えられたとおりに泳いでみる。

そうすると、水の中を驚く程スムーズに進めた。


「佐野くん!」

立ち上がって振り返る。


「そうそう。だいぶよくなった。あとは距離を泳げるようにすれば、テストも合格できるんじゃない?」

「うん、ありがとう!」


あたしが興奮気味に頷くと、佐野くんがにっこりと笑う。

佐野くんの笑顔はやっぱり今日もあたしの胸をきゅんと強く刺激した。