「このオレンジは、目立つかなぁと思ってやってんの」
散々あたしを笑ったあとで、不意に真顔になった佐野くんがオレンジ色の髪をくしゃりと指で掻く。
額にかかる前髪の隙間から、彼の双眼がじっとあたしを見据えていた。
「目立つ?」
確かに、プールの中で佐野くんは一際目立ってた。
オレンジ色の髪は、プールの中で彼の存在を際立たせてる。
だけど佐野くんの容姿は普通にすごくかっこいいし、泳いでいるときの姿も綺麗だし。髪の色が何色でも十分目立つ気がする。
「佐野くん、目立ちたがり屋なの?」
首を傾げながら訊ねると、佐野くんが足下に視線を落とした。
「そうかも」
笑いを噛み殺すように小さくつぶやいた佐野くんが、あたしの顔を覗き込むようにふと視線をあげる。
目が合うと、佐野くんはあたしの頭に手をのせた。
驚いて一瞬硬直したあたしを見下ろして、彼がにこりと笑う。
「早瀬。明日もちゃんと来いよ?おもしろいから」
おもしろい……!?
最後の言葉が気になったけど、佐野くんの笑顔はもう十分すぎるくらい、あたしの胸をきゅんと強く刺激した。