「俺、小さい頃から水泳やっててさ。塩素のせいで色素抜けたのか、気付いたらこんなオレンジ色になったんだ」
「そうなの?」
思わず身を乗り出してしまったあたしの手元から、アイスキャンディのオレンジ色の水滴がぽとぽと落ちる。
「毎日プールで泳いでたら、そんな綺麗なオレンジ色になるんだ……」
佐野くんのオレンジ色の髪を見つめてうっとりと呟く。
佐野くんの綺麗な髪の色は、天然なんだ。
ちょっと感動していると、佐野くんが突然声を立てて吹き出した。
「バカ。本気で信じるなよ。いくら毎日プールで泳いでるからって、こんなオレンジにならねぇよ。染めてるに決まってるだろ」
佐野くんがあたしを見ながらケラケラと笑う。
「え、騙したの?」
「騙すも何も、普通ひっかかる?ちょっとくらい茶色くなることはあったとしても、オレンジにはなんないだろ。早瀬、よく天然て言われない?」
よっぽど面白かったのか、佐野くんはいつまでもお腹を抱えてケラケラと笑って、なかなか笑い止まない。
あまりに笑われすぎて恥ずかしくなったあたしは、彼の隣で顔を赤くするしかなかった。
「そんな笑わなくても。だって、佐野くんが本気っぽく言うから……」