甘いオレンジの味と冷たい氷の感触が、喉の奥をきゅんと刺激する。


「美味いだろ?」

あたしが頷くと、佐野くんが満足気ににっこりと笑った。

彼の無邪気な子どもみたいな笑顔が、今度はあたしの胸の奥をきゅんと刺激する。

その刺激に反応して、なぜか顔まで熱くなる。

それを何とか誤魔化したくて、あたしは必死にちまちまとアイスキャンディを齧った。


そうしていると、佐野くんとの間に妙な沈黙が流れ始める。


聞こえてくるのは、あたしと佐野くんのアイスキャンディを齧るシャリシャリという音だけ。

あたしは無言でおいしそうにオレンジのアイスキャンディを齧っている佐野くんを見上げた。

その顔があまりに満足そうで幸せそうだから、ついどうでもいいことを訊いてしまった。


「お……オレンジ好きなの?」

「へ?」

アイスキャンディを齧りながら、佐野くんが不思議そうな顔であたしを見る。


「すごくおいしそうに食べてるし。それに、髪の毛だってオレンジ色だから」

「あぁ」

佐野くんは上目遣いで自分の前髪を見ると、指先でオレンジ色の髪の先を軽く摘んだ。