制服に着替えてプールを出ると、オレンジ色の髪をした制服姿の男の子が出入り口の横の金網に凭れるように立っていた。
「早瀬。お疲れ」
そこを通りかかったあたしに、彼が声を掛けてくる。
佐野くんだった。
「いつの間にかいなくなってるから、とっくに帰ったのかと思った」
あたしが少し嫌味な口調で言うと、佐野くんが苦笑いした。
「早瀬のことはちゃんと見てたよ。だから、先にプールから出て買ってきてやったんだけど」
佐野くんはそう言いながら、後ろに隠していたものをあたしに差し出す。
佐野くんが手にしているのは、オレンジ味のアイスキャンディだった。
「やるよ。泳いだあとに食べると美味いから」
佐野くんはふたつ持っていたアイスキャンディのうちのひとつをあたしに渡すと、自分の分の袋を開けた。
佐野くんの髪の色とよく似たオレンジ色のアイスキャンディ。
あたしも袋を開けると、彼に倣ってオレンジ味のアイスキャンディの端を少し齧った。



