「翠都ー、お前さっきから女の子とふたりで何してんの?」
飛んできた黒い物体を佐野くんが手のひらに受け止めたとき、プールサイドから声がした。
「イチ先の代わりに泳ぎ方教えてんの」
「あー、ずっと補習来てる?」
声のほうに視線を向けると、佐野くんに負けないくらいよく日焼けした、茶髪の水泳部の男子があたしを見てにかっと笑った。
「泳げるようになりそう?」
プールサイドから、その彼があたしに問いかけてくる。
「んー――…」
そうなればいいと思うけど。
「なるなる。俺が手取り足取り教えてるから。高崎、もう用済んだからお前はさっさと練習戻れよ」
首を傾げていると、佐野くんが勝手にそう答えて、プールサイドの彼を追いやるように手を振った。
「翠都だって女の子と練習サボってるくせに」
猫でも追い払うみたいな雑な扱いを受けた彼…高崎くんが、ちょっとふてくされて顔を顰める。
「俺はサボりじゃなくて、補習の手伝いしてんの。ほら、早く行けよ」
佐野くんが、また軽く手を振って高崎くんを追い払う。



