「とりあえずやってみろよ。さっきやったみたいに顎を引いておへそを見るようにすることと、足は付け根から動かすイメージでゆっくり動かすこと」
「でも……」
反論しようと唇を尖らせると、佐野くんがにやりと笑った。
「せっかくの夏休みが、このまま補習で終わってもいいの?」
「……」
そう言われると、言い返す言葉がない。
あたしはため息をつくと、仕方なく水面に顔をつけた。
「よし、行け!」
佐野くんに背中を押され、あたしはプールの壁を蹴った。
頭を中に入れて、顎を引いて……
おへそを見る。
それを意識すると、あたしの身体は水の中でふわりと浮いた。
足は付け根から全体を動かすイメージで。
佐野くんに言われたとおり、落ち着いてゆっくり足を動かしてみる。
すると、自分の身体が水中でぐんと前に進んだような気がした。
佐野くんに教わる前よりも、身体が疲れないし、苦しくもない。
今まで感じていた水への不安も少し和らいでいた。



