その笑顔に、一瞬心臓持って行かれたかと思った。
佐野くんと繋いでいた手を振り切るように離して、左胸に両手をあてる。
持って行かれたかと思った心臓はちゃんとそこにあったけど、それは今までにないくらいドキドキと激しく鳴っていた。
なんだ、これ。
胸を抑えながら顔を顰める。
「じゃあ次、床から足浮かせれる?俺、さっきみたいに早瀬の手を持っとくから」
しかめっ面のあたしに佐野くんが次の指示を飛ばしてくる。
その声音は完全に指導者のそれで。
ひとりでドキドキしてる場合じゃないんだ、と慌てて思い直す。
佐野くんの指示に従って、恐る恐る水に顔つけると、彼はさっきみたいにあたしの手を繋いでくれた。
そのことに安心して、自然と肩の力が抜ける。
「床蹴って。浮いてみて」
佐野くんに言われたとおり、床を蹴ってそこから足を離す。
それから足をバタつかせ、精一杯水に浮く努力をしてみた。
でもそうすればするほどあたしの足もお尻も沈んでいってしまう。



