「じゃぁ、学校じゃなかったらいいんだ?」

佐野くんの口元が意地悪くつりあがる。


「いや、そういう意味じゃなくて――」

佐野くんに腕をつかまれたままもがいていると、彼がおかしそうに声をあげて吹き出した。


「冗談だよ、バカ。お前、ほんとおもしろいよな」

佐野くんがあたしの腕を離して、ケラケラと笑う。


「からかってたの?」

涙目になりながら睨むと、佐野くんが優しい目であたしを見つめて頬にそっと触れた。


「そんな顔すんなって」

「だって佐野くん、あたしのことおもしろいって……」

ふて腐れてそむけたあたしの顔を、佐野くんが正面に引き戻す。

頬を膨らませて小さな抵抗を示すあたしを、佐野くんが優しい目で見つめる。

その眼差しに、あたしの胸はきゅんとときめいた。